「冷たい熱帯魚」を観て眠れなくなった話

投稿者 neilturner

観なければよかった、と思ったのは映画を観終えて三日後のことです。いや、正確には「観てよかった」と「観なければよかった」が頭の中でぐるぐるしていて、どちらにも決着がつかないまま布団の中で天井を見ていた、という感じです。

園子温監督の「冷たい熱帯魚」は、実際の事件をベースにした2010年の作品です。熱帯魚店を営む気の弱い主人公が、カリスマ的な経営者・村田に取り込まれ、殺人の共犯者へと堕ちていく。そういうあらすじだけ読めば「ああ、バイオレンス系ね」で終わるんですが、実際に観ると全然そんなもんじゃない。

特に記憶に刻まれたのが、でんでん演じる村田と女性たちが絡む場面でした。あれを濡れ場と呼んでいいのかすら迷うくらいで、支配と恐怖と性が一つの画面に圧縮されている。色気とか官能とかいう言葉が吹き飛んで、ただただ「人間が壊れていく瞬間」を見せられている感覚でした。

映画好きの知人が濡れ場作品レビュー一覧を自分なりにまとめていて、そこにこの作品を入れるかどうか迷ったと話していました。ジャンルとして括るには、あまりにも異質すぎると。その気持ち、すごくわかります。

この映画が恐ろしいのは、暴力も性描写も「悪趣味」で終わらないところです。見終わった後に残るのは嫌悪感じゃなく、どこか自分の内側に問いを置いていかれた感覚。あなたは本当に、村田のようにはなれないと言い切れますか? と。

たぶんまた観ます。観たくないのに、また観てしまうと思います。そういう映画です。

投稿者 neilturner