大学卒業の記念に、自転車で日本一周に挑戦した。資金も経験も乏しかったが、「今しかできない」と勢いでスタート。初日は東京から千葉を目指したが、30キロで膝がガクガク。道端で休んでいたら、おばさんが「頑張ってるね」と水をくれた。
その優しさに元気をもらい、なんとか進んだ。旅の途中、雨でずぶ濡れになったり、パンクで途方に暮れたり、トラブル続きだった。でも、北海道の広大な畑、九州の海沿いの道、東北の山間の温泉など、景色が全てを忘れさせた。特に印象的だったのは、広島で出会ったおじいさん。自分の家に泊めてくれ、戦争の話を聞かせてくれた。
彼の「生きてるだけで幸せ」という言葉が、今でも心に残る。3ヶ月でゴールした時、痩せて日焼けした自分に笑った。旅の記録はノート3冊分。そこには、見た景色や食べたもの、出会った人の言葉が詰まっている。自転車旅は体力勝負だったけど、人の温かさと日本の美しさを教えてくれた。いつかまた、違うルートで走りたい。